営業事務としての転職や再就職を目指す中で、「職務経歴書」の完成度は内定獲得に大きな影響を与えます。ただ事務経験があることを伝えるだけでは不十分で、採用担当者に「この人と一緒に働きたい」と思わせる内容に仕上げることが必要です。本記事では、営業事務に特化した職務経歴書の書き方や記載例、アピールポイントを、採用担当者目線で徹底的に解説します。
目次
営業事務の職務経歴書で重視されるポイント
営業事務の職務経歴書では、単なる事務作業の羅列ではなく、「どんな成果をどのように出したか」「どのように営業を支えていたか」を具体的に示すことが求められます。特に次のような項目は重要です。
● 正確な事務処理能力とPCスキル
営業事務では、見積書や請求書の作成、データ入力などミスが許されない業務が多く、正確性が重視されます。同時に、ExcelやWord、PowerPointなどのPCスキルも必須です。単に「使える」ではなく、どのレベルで、何に使っていたかまで明記することがポイントです。
● 業務経験の具体性と量
担当業務が幅広いほど、職務経歴書にはその内容を網羅することが求められます。単に「受発注業務」などと書くのではなく、「1日平均○件」など件数や頻度を添えて記載しましょう。
● 成果や改善の数字化
「業務の効率化を図った」「ミスを減らした」などの成果を挙げる際は、できる限り数字や事例を用いると説得力が増します。
● サポート力・調整力・コミュニケーション力
営業担当とのやり取りや他部署との調整、顧客対応など、事務処理以外の部分も評価対象になります。自分がどのようにチームを支えてきたかをアピールしましょう。
基本構成と記載項目
営業事務の職務経歴書は、以下のような構成が一般的です。
- タイトル・日付・氏名
タイトルは中央に大きく、日付・氏名は右上に配置。 - 職務要約
3~5行程度で、これまでの経験と強みを簡潔に要約。 - 職務経歴
会社名、在籍期間、業種・規模、部署名、担当業務、実績などを記載。 - 資格・スキル
PCスキルや業務系の資格を箇条書きで明記。 - 自己PR
強みや仕事への取り組み姿勢、エピソードを交えて簡潔に。
営業事務の職務経歴書の書き方と具体例
【職務要約の例】
○○株式会社 営業部にて6年間、営業事務を担当。受発注処理、見積書作成、請求対応などの基本業務に加え、営業5名のサポートとして、データ管理や顧客対応も実施。Excel関数やピボットテーブルを駆使し、業務の効率化とミス削減に取り組み、チームの業務改善にも貢献。
【職務経歴の例】
20XX年4月 ~ 現在 ○○株式会社(飲料・菓子製造卸/資本金3億円/従業員120名)
営業部 営業事務(正社員)
- 受発注業務(1日平均30件/電話・メールでの対応含む)
- 見積書・請求書・納品書・契約書作成(1日平均10件)
- 営業担当5名のアシスタント業務(担当顧客数:合計50社)
- 顧客データ管理、売上データの集計(Excelにて関数・ピボットテーブル使用)
- 社内マニュアル・テンプレート作成
- 備品管理、電話応対、来客対応
【実績・成果の記載例】
- データ入力ミスを30%削減(マニュアル作成とダブルチェック体制の構築)
- 受発注フロー見直しにより、処理時間を月30時間削減
- 見積書のテンプレート導入でミス0件を継続(過去12か月)
- 顧客データ100件以上を整理・更新し、営業担当の対応効率を改善
- 電話・メール対応1日平均20件以上、クレームゼロを維持
- 発注単位の見直しで備品コストを年間3万円削減
【資格・スキルの記載例】
- Excel(関数:IF・VLOOKUP、ピボットテーブル、グラフ作成)
- Word(ビジネス文書、表作成、差し込み印刷)
- PowerPoint(提案資料作成、図表・アニメーション使用)
- 秘書技能検定2級
- MOS Excel 365&2016
- TOEIC 650点
【自己PRの例】
営業事務として、正確な事務処理とコミュニケーション力を活かし、営業担当者や顧客との信頼関係を築いてきました。マニュアル作成やテンプレート化により、業務のミス削減・効率化に取り組み、チームの残業時間を月平均3時間削減するなど、業務改善にも貢献。今後も「先を読む力」と「気配り」を武器に、円滑なサポートで貴社の業務推進に寄与したいと考えています。
アピール力を高めるコツと注意点
● 数字を使って説得力アップ
業務の量や成果は、具体的な数値や割合で表現しましょう。
- 「日々の処理件数:○件」
- 「ミス削減率:30%」
- 「業務時間短縮:月○時間」
● スキルは機能レベルで明記
PCスキルを「Excelが使えます」ではなく、「VLOOKUP・ピボットテーブルを用いて月次データ集計」と記載すると、採用側が理解しやすくなります。
● チームでの役割も明確に
サポート人数や担当営業の規模感を示すことで、業務負荷や責任の大きさも伝わります。
● 未経験の場合の工夫
未経験でも、以下のような内容を盛り込めば評価されやすくなります。
- 取得予定や勉強中の資格(MOS、秘書検定など)
- 前職でのサポート経験
- PCスキルの実務活用例
- 人との連携経験(接客業など)
私の実体験:書き直し3回で「事務作業の羅列」から“採用が欲しがる職務経歴書”へ
営業事務として最初に転職活動を始めた頃、私は「とにかく業務を全部書けば伝わる」と思っていました。
受発注処理、請求書発行、電話応対、備品管理……。
確かにやってきたことは多いのですが、どの会社にもある“普通の事務”にしか見えず、書類選考では不採用通知が続きました。
① 1回目の書き方:「全部書けばいい」の失敗
最初の職務経歴書は、“作業の羅列”そのものでした。
「受発注処理を担当」「見積書を作成」「電話対応を実施」
一見正確に見えますが、採用担当者の立場からすると、他の応募者との違いが分からない。
また、「成果」や「数字」がないため、どの程度の業務量をこなしていたのか、どれだけ貢献したのかが伝わらない内容でした。
② 2回目の改善:「数字」と「工夫」を入れて説得力を出す
次に取り組んだのは、“事実+数字+改善”のセットで書くこと。
ハローワークの相談員にアドバイスをもらいながら、毎日の業務を数値化してみました。
- 受発注処理:1日平均30件、Excel管理表で納期遅れゼロを3か月継続
- 見積書作成:テンプレートを統一し、誤記入率を20%→0%へ改善
- データ集計:VLOOKUP関数を導入して、月次レポート作成時間を2時間短縮
数字を入れるだけで、「仕事をこなしていた」から「課題を見つけ、改善できる人」に印象が変わりました。
③ 3回目のブラッシュアップ:「支える力」を中心にストーリー化
3回目の書き直しでは、単なるスキルや業務内容よりも、
“営業をどのように支えてきたか”という視点で構成しました。
私は営業5名のサポート担当だったため、営業が提案活動に集中できるよう、
「事務処理の負担を減らす」ことを自分のミッションに設定。
たとえば、
- 売上データの集計を自動化して、営業会議の資料作成を効率化
- 顧客リストをExcelで整理し、問い合わせ対応時間を短縮
- 営業担当が不在の際も、顧客への納期回答を即日対応できる体制を構築
これらを職務経歴書の「実績」欄に入れると、面接では必ず
「具体的にどうやって効率化したんですか?」
と聞かれるようになり、会話が広がりました。
つまり、面接で話題になる職務経歴書に変わったのです。
④ 自己PRで「正確さ」より「貢献力」を伝える
以前は「ミスが少ない」「几帳面」といった表現ばかりでしたが、
それでは“守りの印象”しか与えられません。
そこで、最終版では次のように書きました。
営業事務として、チーム全体がスムーズに動けるよう「先回りのサポート」を意識しています。
データ管理の効率化やマニュアル化を通じて、営業担当者の業務時間を月平均3時間削減。
単なる事務作業ではなく、営業の成果を支えるパートナーとして行動してきました。
この“支える姿勢”を加えたことで、「一緒に働きたい」と思わせる文章に変わったと感じます。
⑤ 結果と学び
この修正版を提出してから、
書類選考の通過率は10社中8社に上がりました。
面接でも「数字が具体的」「業務改善の視点がある」と高評価。
最終的に、応募した企業の中から3社から内定をもらいました。
まとめ:営業事務の職務経歴書で意識すべき3つの視点
- 作業の列挙ではなく、「成果」と「支援力」で書く
- 数字を入れて、事務の価値を“見える化”する
- チームや営業の成果につながる行動を中心に描く
営業事務は、ただの“裏方”ではありません。
営業が成果を出せる環境を作る「チームの潤滑油」です。
職務経歴書も、その「支える力」を数字とエピソードで示せば、
“他の事務職とは一線を画す一枚”になります。
まとめ
営業事務の職務経歴書を作成する際は、「何をどのようにやってきたか」「どうチームに貢献してきたか」を、数字や具体的な表現で明確に記載することが重要です。特にPCスキル、正確性、調整力は大きなアピールポイントとなります。
未経験であっても、意欲的な姿勢やサポート力、対人スキルを積極的に伝えることで、採用担当者に好印象を与えることができます。自分の強みを冷静に分析し、採用側の視点で職務経歴書を作り上げましょう。